2024年10月29日2024年10月29日皮膚科医に学ぶ正しいスキンケア,美容コラム
流行りの「HIFU」について
コロナ禍後、美容に目を向けるかたの数は、だいぶ増えた印象があります。
そして、最近のトレンドはやはりHIFU(高密度焦点式超音波療法)でしょう。
メディアや雑誌での特集は、群を抜いて多いと思います。
基本的にダウンタイムが少なく、リフトアップができるとあって、若いかたから高齢のかたまで受けているようです。
その人気の理由は、施術を受けられる場所も、エステサロンから医療施設まで幅広く扱っていて、気軽にできるということもあるでしょう。
そして、今まであった機器よりも直後の「リフトアップ」効果を体感しやすいということも大きな要因と思います。
このように、良いことばかりピックアップされるHIFUについて、少し紐解いていこうと思います。
HIFUとは
HIFU (High Intensity Focused Ultrasound)は「高密度焦点式超音波療法」というもので、国内では前立腺肥大症、症候性子宮筋腫の治療で薬事承認を取得している治療法です。
その技術を美容に応用してリフトアップ効果を狙うものが、美容で行うHIFUです。
HIFUは、超音波を一点に熱エネルギーを集約させて、タンパク質変性を起こさせる、さらにはその回復によって、内部組織の引き締めを狙う美容治療です。
そのため、あえてドット状に照射していきます。
これは、全体に熱変性を起こすと、組織回復に時間がかかり、また無用な瘢痕を防ぐためです。
基本的なターゲットとなる深さは「fascia」と言われる組織、特に顔は「SMAS筋膜(表在性筋膜)」がある深さです。
アプローチする「SMAS筋膜」
日本語でfasciaを「筋膜」と表現されていることが多いのですが、イコールではありません。
「筋膜」という言葉だけでみると、一見筋肉の周りだけの話と思ってしまいますが、実際は、全身の臓器、組織を仕切る、そして隙間を埋める「膜、結合織」としてfasciaは存在しているのです。
HIFUのターゲットなる層は、SMAS(superficial musculo-aponeurotic system)と呼ばれる、帽状腱膜や前頭筋、浅側頭筋膜、広頚筋と連続しながら、顔の広範囲に広がる表在性筋膜です。
端は筋肉と連続し、その他は主に浅層深層の脂肪を隔てる部位に存在します。
上記の通り筋膜と言っても線維性の成分で、劣化も当然していきます。
そこでHIFUによるアプローチというのは、確かにリフトアップ効果が出る理由として納得です。
当然リスクもあるHIFU
良いことずくめのような印象のあるHIFU、もちろん難点、注意しないといけない部分もあります。
まず、一点に熱を集中させるということは、対象となる層を間違えてしまえば、特に表皮層に入ってしまえば、やけどになります。
これは、照射プローブと肌との隙間ができるとなるようです。
やけどとなると、色素沈着にもなります。
また熱のこもりかたが強くなると、表層への熱波及、刺激によってしみの悪化も、可能性としてはゼロではありません。
そして、ある程度深い位置がターゲットであり、血管やリンパ、神経の走行に気を付ける、特にそれらの出入口には注意が必要です。
ちゃんとした解剖の知識があってこその治療とも言えます。
それらの損傷は後遺症として残ることもあるでしょう。
またドット状の瘢痕を内部に作るので、そうそうないとは思いますが、作用が強く出ると凹みやその治癒過程でしこりがでてくる可能性もあると思います。
HIFUは、とても人気のある治療器です。
リフトアップ効果を狙う治療器の中では、体感の出やすい機器です。
しかし、ターゲットなる層をしっかり把握してこその治療であることも忘れてはならないポイントです。
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