2013年11月10日2013年11月10日スキンケアの基礎知識
美容&スキンケア情報「アトピー性皮膚炎改善の化合物を発見(京都大学)」
アトピー性皮膚炎改善の化合物を発見
京都大学の椛島健治准教授とアステラス製薬が、
マウスを使った実験で、
アトピー性皮膚炎の症状改善に役立つ化合物を突き止めたという内容です。
現在では国民の約1割がアトピー性皮膚炎に罹患していると言われています。
アトピー性皮膚炎は肌のバリア機能が低下することで
異物に対する免疫応答が過剰に誘導され症状が悪化することがあります。
健康な肌は表皮の角質層のバリア機能によって保たれています。
そのバリア機能に必要とされているのが
「フィラグリン」
という成分です。
このフィラグリンは表皮の細胞に含まれている成分で、
皮膚の角質層が作られる段階で、
プロフィラグリンがフィラグリンへと姿を変えていきます。
フィラグリンは角質成分であるケラチンとともに表皮にとって大切な成分です。
このフィラグリンの生成がなされなければ角質異常がおこる原因となり、
皮膚のバリア機能が低下してしまうことになります。
そして、皮膚のバリア機能が低下すると、
アレルギーを起こす物質(アレルゲン)が皮膚から体内に侵入してしまいます。
そのため、皮膚で炎症が起こり、アトピー性皮膚炎を起こしてしまうことになるのです。
2006年のイギリスでの研究ではこのフィラグリンの遺伝子の異常が
アトピー性皮膚炎の患者の約1/3から半数に見られたと報告されています。
また、2008年には、日本でアトピー性皮膚炎の患者の約20%に
フィラグリン遺伝子の異常が見られるという報告もあります。
また、海外で、生まれた子供を観察していくコホート調査では、
フィラグリンの遺伝子異常がある場合、ペットなどを飼っていると、
かなりの確率でアトピー性皮膚炎になることが報告されています。
同チームが、アトピー性皮膚炎の患者ではフィラグリンが通常より少ないことに注目し
研究を進めた結果、『JTC801』という物質が
培養表皮細胞のフィラグリン(プロフィラグリン)の発現を高めることがわかりました。
また、ヒトの皮膚に近い構造を持つ3次元表皮培養にこのJTC801を加えたところ、
フィラグリンの発現が高まることが分りました。
そして、フィラグリン遺伝子に変異を持つマウスにJTC801を投与させたところ、
マウスでもフィラグリンの発現が高まることがわかりました。
さらに、アトピー性皮膚炎のマウスにJTC801を内服させた実験では
マウス群で、皮膚のフィラグリンが発現亢進しており、
アトピー性皮膚炎の症状が改善することがわかりました。
JTC801を約6週間与えた研究では、顔などにあった皮膚炎が
ほとんど見えなくなるまで回復したと報告されています。
同研究成果は 2013年9月17日
米国のアレルギー専門誌「The Journal of Allergy and Clinical Immunology」に掲載されました。
以上より、
今回の研究で皮膚のフィラグリンの発現をあげることで、
アトピー性皮膚炎を改善させうることを世界で初めて証明しました。
また動物モデルにおいて、内服で、アトピー性皮膚炎の症状を改善されることも分りました。
今回の研究成果から、今後フィラグリンをターゲットとした新たな治療戦略、
特に新規内服治療剤の開発が期待されます。
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