2023年5月16日2023年5月16日大学教授に学ぶ正しい化粧品の知識

肌荒れ防止効果をもつフラーレン

フラーレンは、ダイヤモンドと同じ

炭素の同素体(同一元素だけで構成される分子)で、球状の分子です。

 

 

1985年にフラーレンを発見し、その構造を推定した

クロトー博士とカール博士とスモーリー博士は、

その功績でノーベル賞を受賞しました。

 

フラーレンには、水に全く溶けないものの、

生体に有害なフリーラジカル・活性酸素を

分子レベルで消去吸収する特徴があります。

 

 

 

 

このため、フラーレンを高分子で包接する事で

水溶化させた水溶性フラーレンが開発され、

抗酸化化粧品成分であるラジカルスポンジ(Radical Sponge:RS)として販売されています。

 

当研究室では、ラジカルスポンジをヒト角化細胞に添加して

紫外線(UVB)を照射した後、3日間培養した結果、

ラジカルスポンジは、フラーレンを含まないものと比較して、

CE量を増加させることが分かりました。

 

これにより、フラーレンが紫外線によって障害されたCE形成を回復させ、

バリア機能を正常に保つ働きがあることが分かりました。

 

 

 

 

この作用には、フラーレンがCE形成のためのタンパクを架橋させる

酵素トランスグルタミナーゼ1の

発現量を増加させる事が

関与することも確認しました。

 

また、ラジカルスポンジによってテープストリップで

強制的に荒らしたヒトの肌のバリア機能を改善させることも確認できました。

 

このようにして、当研究室では、フラーレンは

紫外線による角層のCEのダメージを減らすことで、

肌のバリア機能を改善させることが示され、フラーレンが肌荒れを防ぐ事を見出しました。

 

 

 


記事

前田 憲寿 先生

医学博士

東京工科大学 応用生物学部 応用生物学科

一般社団法人日本スキンケア協会 顧問

特許庁 機能性皮膚化粧料調査委員会 委員長

九州大学大学院薬学研究科、東北大学大学院医学研究科を経て、資生堂ライフサイエンス研究センター皮膚科学研究所にて主任研究員を務める。2007年に東京工科大学バイオニクス学部教授、バイオ・情報メディア研究科教授に就任。2008年より、同大学応用生物学部、バイオ・情報メディア研究科教授に就任。専門分野は、香粧品科学、皮膚科学、分子細胞生物学、生化学、薬理学など。テレビなどのメディア出演も多数。

 

 

 

 

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