2022年12月20日2024年5月17日大学教授に学ぶ正しい化粧品の知識
みずみずしいうるおいのある素肌-5 表皮細胞間の接着とバリア機能
表皮角化細胞は基底細胞層で分裂し、有棘細胞,顆粒細胞と分化しながら最終的に角質細胞(角層)へと角化します。
角層は空気と生体との境目に形成されるので、胎児や水中で生息している生物にはありません。
このように、生体の最外層が空気とのバリア構造を保つために外的環境に敏感に対応して、角化が行われ、角層が形成されるのです。
このほかに、表皮には水分の蒸散と正常な角質剥離を制御するシステムがあります。
それが、細胞間接着構造のデスモソームと細胞間隙での物質の移動を制御するタイトジャンクションです。
デスモソームは図に示すように、隣り合った細胞内のケラチン細胞骨格の先端がデスモソームカドヘリン(desmosomal cadherin)を介して細胞外で結合している構造です。
≪図≫15層からなる角層とデスモソームの分子モデル (△はデスモソーム)
デスモソームカドヘリンは細胞膜貫通型蛋白質であり、表皮角化細胞同士はデスモグレイン(desmoglein)1~4,デスモコリン(desmocollin)1~3 によって接着しています。
基底層では主にデスモグレイン3 とデスモコリン3 が発現し、角層に移行するほど減少し、デスモグレイン1 とデスモコリン1 が発現するようになります。
角質細胞層のデスモソーム(コルネオデスモソーム)はデスモグレイン1 とデスモコリン1 からなります。
このデスモグレインとデスモコリンの角化に伴う量と分布パターンの変化とプロテアーゼによる分解から保護されることによって、一定の強さを持つ角層が形成されるので、デスモソームは表皮バリア機能に重要なのです。
デスモコリン1 ノックアウトマウスでは、表皮浅層が脆弱で表皮バリア機能の障害がみられ、物質の漏出がみられます。
このことからデスモコリン1 の適切な発現は正常角化と表皮バリア機能の保持に必要と考えられます。
さらに、表皮細胞間隙の液体や物質の移動はタイトジャンクションによって制御されています。
タイトジャンクションは汗腺などの腺細胞や導管上皮でよく発達して、液体が管腔内から漏れて間質に流出しないように細胞間隙間バリアを形成しています。
管腔内に分泌された物質は、タイトジャンクションが物理的バリアを形成しているために管腔上皮の間を通って間質に流出できないと考えられています。
タイトジャンクションはクロージン(claudin) 1、2 と4 が隣の細胞と結合しています。
タイトジャンクションにはその他の分子としてZo-1、Zo-2、オクルージン(occludin)が凝集しています。
これらの蛋白は顆粒層に特に集中しているので表皮の顆粒層でのバリア機能にも重要であると考えられています。
また、デスモコリン1の両側に分布し、プロテアーゼの侵入を阻害してプロテアーゼによるデスモコリン1の分解を抑制している可能性があります。
実際,クロージン1 欠損マウスでは真皮に注射した色素が角層まで浸透してくることと、TEWL(trans-epidermal water loss)が亢進していることから、タイトジャンクションの機能の低下が表皮バリア機能の低下に繋がると推察されています。
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