2019年11月11日2019年11月11日大学教授に学ぶ正しい化粧品の知識
美容&スキンケア情報「みずみずしいうるおいのある素肌 肌の見え方」
美容&スキンケア情報「角層の水」
皮膚の最外層には、角質細胞が 15 ~ 20 層に積み重なった
厚さ 20 μ m 程度の角層があります。
角層は皮膚を乾燥などから守るバリア機能を担っています。
角層の柔軟性は、その水分量によって変わり、
10~ 20% のとき自然な柔軟性を示し、
10% より少なくなると角層がひび割れ、
肌荒れが生じるといわれています。
角層の固形成分の比率は、およそケラチンが58%、
脂質が11%、NMF が 30 % です。
種々の原因により角層の保湿機能が失われると水分含量が低下し、
皮膚の表面は乾燥して容易に亀裂を生じ、悪化すると鱗屑や過剰な
落屑を生じるようになります。さらに、肌の透明感や化粧のりの良さは
角層に含まれる水分量で決められているといってもよいぐらいです。
角層の水分は、角層内のNMF やタンパク質などの分子に
結合している結合水です。結合水には2 種類あり、一次結合水は、
160℃で3 分間加熱してはじめて結合がはずれる水で、
通常角層の総重量の 5% 以上含まれています。
一方、乾燥した状態でゆっくりと離れていくような、
比較的弱い結合をする水を二次結合水と呼びます。
この水は、温度・湿度などの外部環境により容易に吸着・離脱を繰り返す水で、
角層の水分保持はいかにこの二次結合水を保てるかに依存しています。
この二次結合水の量は、共存する分子の種類と量によっても異なります。
二次結合水の容量を超えて 角層が水を含んだ場合は、この水は自由水となり、
この自由水の量が一定量を超えると過水( 浸軟) となり、
柔らかくて強靭な性質を失い、ハリがなく脆い角層になります。
皮膚表面を美しくきれいに保つためには、角層の柔軟性を維持することが重要であり、
角層の柔軟性維持には“結合水”の存在が何にもまして重要です。
角層中のNMF やタンパク質などと水との結合により角層は柔軟化します。
角層中で水をしっかり結合させた状態を保つのが保湿因子です。
なかでもグリセリンは結合水が2.2g 水/g 乾燥重量と水を
しっかり結合させる性質があります(図1)。
図1
グリセリンは中性脂肪 ( トリグリセリド) が分解されて
遊離脂肪酸とともに生成されます。角層のグリセリンは、
皮脂腺でのトリグリセリドの分解や表皮角化細胞での
脂質代謝によって生成されます。
頬表面でのグリセリン量は0.7 μ g /cm2 と報告されているので、
皮脂膜の厚さを0.5 μ m とすると、およそ1.4% のグリセリン溶液で
皮膚表面が覆われていることになります。
したがって、皮膚表面では、水をしっかり結合させた状態が保たれいると考えられます。
皮脂膜には、このほかに遊離脂肪酸やトリグリセリド、ワックスエステル、
スクワレンや汗の中の乳酸、アミノ酸などが含まれており、
pH4.5 ~ 6.5の弱酸性に皮膚を保つ働きもあります。
皮脂は一定の厚さになれば分泌は止まるようになっています。
個人差はありますが、洗顔後は30 分ほどで元の角層水分量に戻り、
1 時間ほどで元の皮脂量にもどります。
記事
前田 憲寿 先生
医学博士
東京工科大学 教授
日本スキンケア協会 顧問
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